仮想通貨の盗難、流出により損害を受けた場合の申告2

仮想通貨が盗難に遭い、または取引所から流出した場合 雑損控除が受けられることは、前回お話ししました。

今回は、雑所得の必要経費に算入できるか、という件について検討します。

まず、雑損控除ができれば、雑所得の必要経費に入れる検討をしなくてもいいんじゃないか、と考えると思うのですが、そうとも限りません。

雑損控除は 総所得金額の10分の1を控除した残額が控除額になるため全額控除できないため、全額を必要経費に入れた方が所得税が少なくなる場合があるからです。

雑所得の資産損失の必要経費算入は所得税法51条に規定されています。

所得税法51条

(資産損失の必要経費算入)

4 居住者の不動産所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供され又はこれらの所得の基因となる資産(山林及び第六十二条第一項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する資産を除く。)の損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額、資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの及び第一項若しくは第二項又は第七十二条第一項(雑損控除)に規定するものを除く。)は、それぞれ、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額又は雑所得の金額(この項の規定を適用しないで計算したこれらの所得の金額とする。)を限度として、当該年分の不動産所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

仮想通貨は雑所得の「基因となる資産」であり、

「生活に通常必要でない資産」とはいえないので(前回のブログ参照)

仮想通貨の損失の金額は雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるように読めます。

でも、本当にそうでしょうか・・・?

ここで、金銭債権について考えてみます。

金銭債権は、譲渡所得の基因となる資産から除外されており、これらは雑所得(事業所得)の基因となる資産になります。

所得税法基本通達

(譲渡所得の基因となる資産の範囲)

33-1 譲渡所得の基因となる資産とは、法第33条第2項各号に規定する資産及び金銭債権以外の一切の資産をいい、当該資産には、借家権又は行政官庁の許可、認可、割当て等により発生した事実上の権利も含まれる。

上記の通達と所得税法51条をそのまま解釈すると、金銭債権は、譲渡したら雑所得の基因となる資産になるはずだから、譲渡するつもりが無くても、損失が生じた場合には雑所得の必要経費に算入できると考えられることになります。

これができるのであれば、金銭債権とは無関係の雑所得の収入に対し、たまたま有していた金銭債権の貸し倒れを必要経費に入れることができて、節税できることになります。

でも、それは「必要経費」といえるのでしょうか?

所得税法37条1項で必要経費について以下のように規定しています

「売上原価、その他当該総収入金額を得るために直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用とする」(所得税法37条1項)

つまり、金銭債権については、それが「所得を生ずべき業務について生じた費用」かどうか

により必要経費性が決まります。

そして、必要経費性は主観的認識で決めるのではありません。

その必要性の認定が、関係者の主観的判断を基準としてではなく、客観的基準に即していなければならないことはいうまでもない。

不動産業者賃貸借業者の所有地で現に貸付の用に供されていない土地に対する固定資産税は、それが近い将来確実に貸付の用に供されることが客観的に明らかである場合に限り、必要経費にあたると解すべきであろう(東京高判平成5年12月13日)(租税法第20班 金子 宏著 光文堂283頁)

つまり、その所得に基因となる資産に関する費用(損失)であることが客観的に明らかであるかどうかが分水嶺になると考えるべきでしょう。

金銭債権においても その金銭債権を譲渡することが客観的に明らかな場合に、その債権に損失が生じた場合に雑所得の必要経費に算入することか出来ると考えます。

では、仮想通貨においてはどのように考えればいいでしょうか?

通常支払い手段のみに使っている仮想通貨が盗難にあったりした場合には、仮想通貨譲渡に係る費用にはならず、雑所得に必要経費にはいれられないと考えるのが正しいと思います。

2018年7月現在では、仮想通貨を支払い手段のみで使っている人は少なく、大抵は売買益を上げることを目的として保有しているものと思われます。

従って、交換手段として使ったことがない、若しくは使えない状況であることが明らかな場合、または仮想通貨の売買実績がある場合には、保有したままであっても客観的に値上がり益を狙っての保有であるといえるので、仮想通貨の盗難、流出、横領等から生じた損失は、雑所得の必要経費に算入できると考えています。

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